○日本一の鳥取砂丘を守り育てる条例
平成20年10月21日
鳥取県条例第64号
日本一の鳥取砂丘を守り育てる条例をここに公布する。
日本一の鳥取砂丘を守り育てる条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 保全と再生及び利用の増進(第6条―第9条)
第3章 砂丘利用者への規制等(第10条―第13条)
第4章 罰則(第14条)
附則
鳥取砂丘は、千代川及び日本海の浸食・堆積作用と季節風の吹寄せ力により形成された我が国最大級の海岸砂丘であり、スリバチ、風紋、砂れん等独特の地形や起伏に富んだ景観で知られ、ハマゴウなど固有の砂丘植物も自生する貴重な自然を有する地域である。
しかし、この独特な自然は、長らく鳥取砂丘に人の手が加わるのを妨げたのみならず、周辺に飛砂等の被害をもたらし、それに対抗するため、先人達は多大な労苦と工夫を積み重ねてきた。こうした努力の結果、飛砂防備保安林等が整備されて周辺の農業利用等が進み、本来の姿を留める地域が急速に狭まる中にあっても、鳥取砂丘独特の風物は多くの人々を魅了し、様々な文人墨客が訪れ、文芸作品の舞台等にもなった。
そうした貴重な自然を保護し、人々の保健、休養等に資するべく、本来の姿が保たれている地域を中心に、昭和30年に国指定天然記念物、昭和38年に山陰海岸国立公園の区域に指定された。
しかるに、最近ではその区域内においても砂丘利用者のマナー低下等によりゴミのポイ捨てや砂丘斜面への落書きは後を絶たず、河川、港湾等の整備により砂の供給が減少するとともに、保安林整備等の影響で草原化が進むなど、従来の手法による自然保護の限界を感じさせる事態も生じている。
これに対して、県民参加による鳥取砂丘の除草活動や清掃活動、千代川河口等のしゅんせつ砂を砂丘沖合に供給する事業など、鳥取砂丘の再生を目指す取組が活発化している。また、乾燥地農業の研究拠点が整備され、砂にまつわる文化的な催しも実施されるなど、地域特性を生かした新しい価値や情報の創出と発信の拠点ともなってきている。
このように、鳥取砂丘は、貴重な自然を有するのみならず、先人の努力により特色ある産業・文化活動、学術研究等の拠点ともなっており、非常に多面的な価値を有する県民共有の財産であり、世界に誇れる本県の至宝とも言うべき存在である。このことは、世界ジオパークに認定されたことで、世界中に認められるところとなっている。
このような状況の中、鳥取砂丘の価値を後世に守り伝えていく上で大切なのは、砂丘利用者一人一人が鳥取砂丘の持つ独特の風物への愛着と畏敬の念を共有して節度ある利用に努めるとともに、協力し、連携し合って、自然を守り育てていくことである。
これらが県民を始めとするすべての砂丘利用者が次世代に対して担う責務であるとの認識の下に、人々の協働により鳥取砂丘の保全と再生を推進し、適切な利用を増進することを通じて、その多面的価値の向上を図り、もって貴重な自然を守りつつ社会・経済を発展させてきた本県の象徴として、鳥取砂丘の優れた環境を次世代に確実に引き継いでいくため、この条例を制定する。
(平27条例15・一部改正)
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、鳥取砂丘の保全と再生及びその利用について、基本理念を定め、県及び砂丘利用者の責務を明らかにするとともに、鳥取砂丘の保全と再生及びその利用に関する施策の基本となる事項を定めることにより、適切な利用を増進しつつ、様々な人々の協働による総合的な取組を推進し、もって鳥取砂丘の優れた環境を次世代に確実に引き継いでいくことを目的とする。
(平27条例15・一部改正)
(1) 鳥取砂丘 独特の地形・地質、風致・景観、植生その他の自然環境(以下「固有環境」という。)を有するものとして別表に定める区域をいう。
(2) 砂丘利用者 次に掲げる者をいう。
ア 鳥取砂丘を訪れ、これに立ち入る者
イ 鳥取砂丘において経済、文化等に関する活動を行う者
(3) 保全と再生 固有環境が改変されるのを防止するとともに、それが損なわれた場合には、積極的に原状を回復することをいう。
(基本理念)
第3条 鳥取砂丘の保全と再生は、その固有環境の貴重さと、砂丘利用者の行動が本県の経済、文化等に及ぼす影響を勘案し、地域の健全な発展との調和にも配慮しながら、砂丘利用者の理解と協力の下に協働して推進することを基本として、行われなければならない。
2 鳥取砂丘の利用は、その固有環境に及ぼす影響を十分に把握した上で、県民が誇りと愛着を持つ本県を代表する自然観光資源としての魅力や価値を高めることを基本として、その増進が図られなければならない。
(平27条例15・一部改正)
(県の責務)
第4条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、山陰海岸国立公園等を管理する国、鳥取砂丘及びその周辺の土地利用、景観形成、環境保全等に関する事務を所掌する鳥取市その他の関係機関(以下「関係機関」という。)と連携して、砂丘利用者の協力の下に必要な施策を総合的に推進するものとする。
2 県は、前項に規定する施策を推進するに当たっては、外国人等にも理解しやすいように、言語、文化等の違いに配慮した表記の利用に努めるものとする。
(平27条例15・一部改正)
(砂丘利用者の責務)
第5条 砂丘利用者は、基本理念にのっとり、鳥取砂丘の固有環境の価値及び保全と再生を図ることの重要性を理解し、その保全と再生に自主的に取り組むとともに、県が実施する施策に積極的に協力し、鳥取砂丘の適切な利用に努め、いやしくも鳥取砂丘の固有環境を毀損し、又は鳥取砂丘の快適な利用を妨げるような行為をしてはならない。
(平27条例15・一部改正)
第2章 保全と再生及び利用の増進
(平27条例15・改称)
(砂丘利用者の意識啓発)
第6条 県は、鳥取砂丘の固有環境の価値及び保全と再生を図ることの重要性について砂丘利用者の理解を深め、鳥取砂丘の適切な利用を増進するため、学習の機会の提供、自然保護等に関する活動についての情報の提供、広報等による普及啓発その他の施策を関係機関と連携して実施するものとする。
(平27条例15・一部改正)
(利用の増進)
第6条の2 県は、鳥取砂丘の国内外からの利用を増進するため、次に掲げる施策を関係機関と連携して実施するものとする。
(1) 鳥取砂丘の固有環境の有する価値を全国及び世界に向けて発信すること。
(2) 生物、歴史等の解説、スポーツその他の催し等により、鳥取砂丘と触れ合う機会を創出すること。
(3) 砂丘利用者に対するサービスの改善及び向上を図り、地域の魅力を高めること。
(平27条例15・追加)
(自主取組の促進)
第7条 県は、鳥取砂丘の保全と再生に関する砂丘利用者の自主的な取組を促進するため、取組の組織化に係る仲介又はあっせん、活動に関する関係機関との調整、次条の規定による調査研究の結果等を踏まえた技術的な指導又は助言その他の措置を関係機関と連携して実施するものとする。
(調査研究の実施)
第8条 県は、鳥取砂丘の固有環境とそれに影響を及ぼす気象、水理等の実態及び動向を的確に把握し、鳥取砂丘の保全と再生を科学的かつ効果的に推進するため、関係機関と協力して必要な調査研究を実施するものとする。
(保護工事等の推進)
第9条 県は、前条の調査研究の結果等を踏まえ、鳥取砂丘の保全と再生のため、工事その他の措置が必要と認められる場合には、関係機関との適切な役割分担の下に、その推進を図るものとする。
第3章 砂丘利用者への規制等
(禁止行為)
第10条 何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 文字、図形又は記号(それを内包できる最小の長方形又は円(複数の文字、図形又は記号が一体となって特定の内容を表現している場合にあっては、当該複数の文字、図形又は記号の全部を内包できるものとする。)の面積が10平方メートルを超えるものに限る。)を鳥取砂丘の地面に表示すること。
(2) 鳥取砂丘において、他人の身体又は物に害を及ぼすおそれのある方法で、ボール、花火その他の物を投げ、打ち、又は発射すること。
(3) 鳥取砂丘において、缶、瓶その他の容器、たばこの吸い殼、チューインガムのかみかす、紙くず、動物のふんその他の物を投棄すること。
(4) 鳥取砂丘の地先海域において遊泳すること。
(5) 鳥取砂丘において、他人の上空を飛行し、又は模型飛行機その他これに類するものを他人の周囲に飛行させ、身体の安全に対する不安を覚えさせること。
2 前項の規定は、次に掲げる行為については適用しない。
(1) 自然公園法(昭和32年法律第161号)第20条第3項本文の許可を受けてする行為、同項ただし書の規定により当該許可を要しないこととされる行為(同条第7項の規定による届出をする場合に限る。)及び同条第9項各号に掲げる行為
(2) 自然公園法第21条第3項本文の許可を受けてする行為、同項ただし書の規定により当該許可を要しないこととされる行為(同条第7項の規定による届出をする場合に限る。)及び同条第8項各号に掲げる行為
(3) 自然公園法第34条第1項の規定による命令に基づく措置として行う行為
(4) 文化財保護法(昭和25年法律第214号)第125条第1項本文の許可を受けてする行為及び同項ただし書に規定する場合において当該許可を受けないでする行為
(5) 文化財保護法第125条第7項前段の規定による命令又は同項後段の規定による指示に基づく措置として行う行為
(平22条例1・平27条例15・一部改正)
2 知事は、現に鳥取砂丘において公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(昭和38年鳥取県条例第22号)第2条第1項又は第3条第1項の規定に違反する行為その他の犯罪行為をしている者があるときは、その者に対し、当該職員をして、当該犯罪行為の中止を指示させることができる。
3 前2項に規定する職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
4 第1項又は第2項の規定による指示については、鳥取県行政手続条例(平成6年鳥取県条例第34号)第13条の規定は、適用しない。
(平27条例15・一部改正)
(原状回復命令)
第12条 知事は、鳥取砂丘において第10条第1項第1号から第3号までに掲げる行為(同条第2項各号に掲げる行為を除く。以下「特定禁止行為」という。)をした者に対し、原状回復を命ずることができる。
(平27条例15・一部改正)
第4章 罰則
第14条 鳥取砂丘においてみだりに特定禁止行為をした者は、5万円以下の過料に処する。
(平27条例15・一部改正)
附則
この条例は、平成21年4月1日から施行する。
附則(平成22年条例第1号)
この条例は、自然公園法及び自然環境保全法の一部を改正する法律(平成21年法律第47号)の施行の日から施行する。
(施行の日=平成22年4月1日)
附則(平成27年条例第15号)
この条例は、平成27年4月1日から施行する。
別表(第2条関係)
鳥取市浜坂字東浜1390番1の土地と同字1390番139の土地との境界線の北端の点を起点とし、起点から同境界線を南方に進み、同境界線と同字1390番1の土地と同字1390番227の土地との境界線との交点に至り、同交点から同境界線を南方に進み、同境界線と市道浜坂2号線の北側端線との交点に至り、同交点から同端線を東方に進み、同端線と県道湯山鳥取線の西側端線との交点に至り、同交点から同端線を北東に進み、同端線と県道鳥取砂丘細川線の西側端線との交点に至り、同交点から同端線を北方に進み、同端線と湯山簡易水道施設管理道の西側端線との交点に至り、同交点から同端線を北方に進み、同管理道の北西端の点に至り、同点と海岸線(海水面が最高水面に達した時の陸地と海水面との境界をいう。以下同じ。)を最短距離で結ぶ直線を北方に進み、同直線と海岸線との交点に至り、同交点から海岸線を西方に進み起点に至る線に囲まれた区域