○とっとりの豊かで良質な地下水の保全及び持続的な利用に関する条例
平成24年12月21日
鳥取県条例第91号
とっとりの豊かで良質な地下水の保全及び持続的な利用に関する条例をここに公布する。
とっとりの豊かで良質な地下水の保全及び持続的な利用に関する条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 影響調査(第6条―第8条)
第3章 採取の届出(第9条―第14条)
第4章 採取量等の監視(第15条―第17条)
第5章 重点保全地域(第18条―第21条)
第6章 事業者等の相互協力(第22条―第26条)
第7章 雑則(第27条―第29条)
第8章 罰則(第30条・第31条)
附則
鳥取県は、大山、氷ノ山などの山々や県土を潤す三大河川といった緑豊かな自然環境に恵まれており、古来より清らかな地下水が育まれてきた。
そして、この地下水は、私たち県民の安全で安心な生活や農業をはじめとする産業の健全な発展の基盤として、県民誰もがその恩恵を享受できる県民共有の貴重な財産となっている。
近年、県内の地下水の利用が増えてきており、その枯渇に対する不安が高まっている。
この問題に関しては、地下水を採取する者はもとより、県、市町村及び県民が地下水の大切さを十分に認識して、みんなが一体となって地下水の保全に取り組んでいくことが必要である。
このため、とっとりの豊かで良質な地下水を保全し、将来にわたって持続的に利用できるようにすることを目指して、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、地下水が豊かな自然環境により長期間かけて育まれる貴重な資源であり、県民生活にとって欠くことのできない水道及び農業、工業その他の産業に利用されていることに鑑み、地下水の採取に関し必要な規制等を行うことにより、地下水を将来にわたって持続的に利用できる環境を守り、もって県民が安心して暮らすことのできる社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 地下水 自然の循環系の中にある水(温泉法(昭和23年法律第125号)第2条第1項に規定する温泉を除く。)のうち、地面からの深さに関係なく、地中に存在するものをいう。
(2) 揚水設備 動力を用いて地下水を採取するための設備(災害の発生その他の緊急事態に限り利用されるものを除く。)で、揚水機の吐出口の断面積(吐出口が2以上あるときは、その断面積の合計をいう。以下同じ。)が14平方センチメートルを超えるものをいう。
(3) 井戸 揚水設備を用いて地下水を採取するための施設(河川法(昭和39年法律第167号)が適用され、又は準用される河川の河川区域内のものを除く。)をいう。
(4) 事業者 井戸により採取する地下水を事業に利用する者をいう。
(5) 重点保全地域 地下水の採取によって地下水の枯渇、濁水化、塩水化、地盤沈下その他の生活環境に係る被害が生じ、又は生ずるおそれがある地域として第18条第1項の規定により知事が指定する地域をいう。
(県の責務)
第3条 県は、市町村と連携し、及び協力して、次に掲げる施策を実施するものとする。
(1) 地下水の水質及び水量に関係する水の循環、地質、水脈その他の事項に係る知見の充実を図ること。
(2) 水源の涵養その他の地下水の水質及び水量の保全に資する事業を推進すること。
(3) 事業者及び県民に地下水の利用状況、水位の変動その他の情報を提供すること。
(4) 地下水が地域共通の貴重な資源として持続的に利用されなければならないとの意識の高揚を図ること。
(事業者の責務)
第4条 事業者は、地下水の採取に当たっては、地下水の枯渇、濁水化、塩水化、地盤沈下その他の生活環境に係る被害が生じないよう努めるものとする。
2 事業者は、節水をはじめとする地下水の適正な利用に努めるとともに、自ら主体的に水源の涵養その他地下水の水質及び水量の保全に資する活動の実施に努めるものとする。
3 事業者は、県が実施する水源の涵養その他の地下水の持続的な利用に関する施策について、積極的に協力するものとする。
(県民の責務)
第5条 県民は、節水をはじめとする地下水の適正な利用に努めるとともに、自ら主体的にその水質及び水量の保全に資する活動を実施するよう努めるものとする。
2 県民は、県が実施する水源の涵養その他の地下水の持続的な利用に関する施策について、積極的に協力するものとする。
第2章 影響調査
(影響調査の実施)
第6条 井戸を設置して地下水を採取しようとする者は、地下水の採取が周辺の地下水の水位に及ぼす影響に関する調査(以下「影響調査」という。)を実施しなければならない。井戸から採取する地下水の量を増加しようとする者も、同様とする。
(影響調査計画書の届出)
第7条 影響調査を実施しようとする者は、影響調査を実施する日の60日前までに、規則で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した影響調査計画書を知事に届け出なければならない。
(1) 井戸の位置及び1年間に採取を予定する地下水の量
(2) 影響調査のために採取する地下水の量及び採取の期間
(3) 影響調査を実施する範囲
(4) その他規則で定める事項
(影響調査についての知事の意見)
第8条 知事は、前条の規定による影響調査計画書の届出があったときは、影響調査を実施する範囲及び方法について、地下水を持続的に利用できる環境の保全の見地からの意見を述べるものとする。
2 知事は、前項の規定により意見を述べるときは、規則で定めるところにより、あらかじめ、鳥取県環境審議会及び影響調査を実施する範囲を管轄する市町村の長の意見を聴くものとする。
第3章 採取の届出
(採取計画の届出)
第9条 井戸により地下水を採取しようとする者は、規則で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した採取計画を知事に届け出なければならない。井戸から採取する地下水の量を増加しようとする者も、同様とする。
(1) 井戸の位置及び1年間に採取を予定する地下水の量
(2) 揚水機の吐出口の断面積その他揚水設備に関する事項
(3) 水量測定器又は採取する地下水の量を測定する方法に関する事項
(4) その他規則で定める事項
(工事完了の届出)
第10条 前条第1項の規定による届出を行った者(以下「届出事業者」という。)のうち揚水設備の工事を行うものは、当該工事が完了したときは、その完了の日から15日以内に、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。
(変更命令)
第11条 知事は、第9条第1項の規定により届け出られた採取計画に基づく地下水の採取が地下水の水位の低下等により地下水の持続的な利用に支障を生じさせると認めるときは、その届出の日から60日以内に限り、届出事業者に対し当該採取計画を変更するよう命ずることができる。
(氏名の変更等の届出)
第13条 届出事業者は、氏名又は名称に変更があったとき及び採取する地下水の量を縮小し、採取を休止し、又は採取を廃止したときは、遅滞なく、規則で定めるところにより、知事に届け出なければならない。
(承継)
第14条 届出事業者から第9条第1項の規定による届出に係る井戸を譲り受け、又は借り受けた者は、当該井戸に係る当該届出事業者の地位を承継する。
2 届出事業者について相続、合併又は分割(井戸を承継させるものに限る。)があったときは、相続人、合併後存続する法人若しくは合併により設立した法人又は分割により当該井戸を承継した法人は、当該届出事業者の地位を承継する。
3 前2項の規定により届出事業者の地位を承継した者は、その承継があった日から30日以内に、規則で定めるところにより、その旨を知事に届け出なければならない。
第4章 採取量等の監視
(水量測定器の設置、採取量の報告等)
第15条 届出事業者は、規則で定めるところにより、揚水設備ごとに水量測定器を設置して当該揚水設備により採取した地下水の量(以下「採取量」という。)を測定しなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、水量測定器を設置しないで採取量を把握することについて知事の承認を受けた届出事業者は、知事が別に定める方法により採取量を測定することができる。
3 届出事業者は、揚水設備ごとに採取量その他規則で定める事項を帳簿に記載し、その帳簿を5年間保存するとともに、規則で定めるところにより、採取量を毎年知事に報告しなければならない。
4 届出事業者は、規則で定めるところにより、井戸ごとの地下水の水位を測定して帳簿に記載し、その帳簿を5年間保存するとともに、その測定結果を毎年知事に報告しなければならない。ただし、井戸の構造上の制約その他のやむを得ない事情により水位の測定が困難な場合は、この限りでない。
(立入調査)
第16条 知事は、この条例を施行するために必要があると認められる限度において、その職員に届出事業者の事業所並びに井戸及び揚水設備を設置している土地(以下「事業所等」という。)に立ち入り、帳簿書類その他の物件を調査させることができる。この場合において、知事は、あらかじめその旨を届出事業者に通知しなければならない。
2 前項の規定により事業所等に立ち入る職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係人に提示しなければならない。
3 第1項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
第5章 重点保全地域
(重点保全地域の指定)
第18条 知事は、区域を定めて、重点保全地域を指定することができる。
2 知事は、重点保全地域を指定しようとするときは、あらかじめ、鳥取県環境審議会及び重点保全地域となる区域を管轄する市町村の長の意見を聴かなければならない。これを変更し、又は廃止しようとするときも、同様とする。
3 知事は、重点保全地域を指定するときは、その旨、その区域及び指定年月日を告示しなければならない。これを変更し、又は廃止するときも、同様とする。
(採取基準の設定)
第19条 知事は、重点保全地域ごとに地下水の採取の基準(以下「採取基準」という。)を定めるものとする。この場合において、水道法(昭和32年法律第177号)第3条第5項に規定する水道事業者及び水道用水供給事業者(以下「水道事業者等」という。)に対する採取基準については、水道が県民生活に欠くことができないものであることに配慮するものとする。
2 採取基準は、揚水設備の吐出口の断面積に応じた採取量その他規則で定める事項について定めるものとする。
(採取基準の遵守)
第20条 重点保全地域において井戸により地下水を採取する者は、採取基準を遵守しなければならない。
2 重点保全地域の指定がなされた際現に当該重点保全地域内で地下水を採取している届出事業者は、採取計画に基づく地下水の採取が採取基準に適合しないときは、当該採取計画を採取基準に適合するよう変更するものとする。この場合においては、当該指定の日から30日以内に、規則で定めるところにより、変更後の採取計画を知事に届け出なければならない。
(採取の停止等の勧告)
第21条 知事は、地下水の水位の急激な低下、著しい濁水の発生その他の異常な現象が生じた場合において、重点保全地域を指定して採取基準を定めるいとまがないと認めるときは、届出事業者に対し、採取する地下水の量を縮小し、又は採取を停止するよう勧告することができる。
第6章 事業者等の相互協力
(協議会の設置)
第22条 事業者は、地下水の水位、水質等の調査及び水源の涵養に関する事業を実施し、並びに採取の適正化及び合理化の推進についての相互の連携及び協調を図ることを目的として、鳥取県持続可能な地下水利用協議会(以下「協議会」という。)を設置する。
(協議会の事業)
第23条 協議会は、次の事業を実施するものとする。
(1) 地下水の水位等の変動の測定及び水質の調査並びにこれらの結果の公表
(2) 会員による水源の涵養を図るための森林整備活動の促進
(3) 地下水の採取についての会員間の情報交換及び調整
(4) 前3号に掲げるもののほか、協議会の目的を達成するために必要と認める事業
2 協議会は、前項の事業の実施について、学識経験者及び関係機関の指導を受けるものとする。
(雑則)
第24条 前2条に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関し必要な事項は、協議会の規約で定める。
(県との関係)
第25条 知事は、協議会の運営について、必要と認める助言をし、又は事業計画その他必要な事項の報告を求めることができる。
2 県は、協議会の運営に必要な経費の一部を予算の範囲内で助成することができる。
3 知事及び事業者は、第23条第1項の事業の実施について、協議会に対し必要な協力を行うものとする。
(研究の推進)
第26条 知事は、協議会の協力を得て、地下水を持続的に利用できる環境の保全に関する研究を行うものとする。
2 知事は、前項の研究を行うために必要な限度において、土地の所有者等に対し、土地の立入りその他の調査への協力を求めることができる。
第7章 雑則
(平25条例42・一部改正)
(町に対する資料の提出の要請)
第28条 知事は、前条第2項に規定する町の長に対し、当該町の区域内における地下水の採取の状況その他必要な事項について、資料の提出を求めるものとする。
第8章 罰則
(罰則)
第30条 次の各号のいずれかに該当する者は、30万円以下の罰金に処する。
(1) 第9条第1項の規定による届出をしないで井戸により地下水を採取し、又は井戸から採取する地下水の量を増加した者
2 次の各号のいずれかに該当する者は、10万円以下の罰金に処する。
(2) 第17条第2項の規定による命令に違反した者
(3) 第20条第2項後段の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成25年4月1日から施行する。
(検討)
3 知事は、平成28年度末を目途として、この条例の規定及びその実施状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
附則(平成25年条例第42号)
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(情報の提供)
2 知事は、伯耆町長から求められたときは、平成25年7月1日に西伯郡伯耆町の区域において井戸により地下水を採取している者に関する情報を提供するものとする。
(罰則に関する経過措置)
3 この条例の施行前に西伯郡伯耆町の区域においてした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。