○子育て王国とっとり条例

平成26年3月25日

鳥取県条例第5号

子育て王国とっとり条例をここに公布する。

子育て王国とっとり条例

子どもは、未来を創り、希望をもたらす大切な存在である。女性が安心して子どもを産み、誰もが育てる喜びを実感し、子どもの笑顔があふれ、全ての人が幸せに生活できる社会を実現することは、私たちみんなの願いである。

近年、核家族化、少子化、過疎化等の進行により、子どもを取り巻く環境が大きく変化している。子どもが健やかに育つことは、子どもや保護者の幸せにつながることはもとより、将来の担い手を育成するという未来への投資として地域全体で取り組むべき重要な課題である。

鳥取県では、従来より、妊娠及び出産から成人に至るまでの全般にわたって様々な施策に取り組んできた。平成22年に始まった「子育て王国とっとり」の取組は、豊かな自然や住民同士の強いきずなを生かし、子育てを地域全体で支えることを目指している。この取組が定着し、鳥取県が最も子育てしやすく住みやすい地域として、世代を超えて受け継がれるようにするため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、急速に少子化が進行し、家庭及び地域を取り巻く環境が変化していることが本県の将来に多大な影響を及ぼすことに鑑み、子育て王国とっとりの取組の基本的な考え方を明らかにし、県及び市町村の責務並びに保護者、子育て支援団体、県民及び事業主の役割を定めるとともに、これらの者が連携協力して子育て支援等に取り組むために必要な事項を定め、もって女性が安心して子どもを産み、誰もが誇りと喜びを感じながら子どもを育て、子どもの成長を愛情を持って支える地域社会の実現に資することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「子ども」とは、心身の発達の過程にある者をいう。

2 この条例において「子育て支援等」とは、子どもの出産及び健やかな成長のための環境整備、子どもの貧困対策その他の子どもを産み、育てることに関するあらゆる支援、援助及び応援をいう。

3 この条例において「保護者」とは、親権を行う者、未成年後見人その他の者であって、子どもを現に監護するものをいう。

4 この条例において「子育て支援団体」とは、社会福祉法人、学校法人、特定非営利活動法人その他の団体であって、子育て支援等を行うものをいう。

(平28条例34・令6条例14・一部改正)

(基本的な考え方)

第3条 子育て王国とっとりの取組は、次に掲げる事項を基本としなければならない。

(1) 子どもの健全な成長が次代の社会の活力の維持に不可欠であるという認識の下、全ての子ども及び子どもを産み、育てる者が、状況に応じ最良の支援を受けられるようにすること。

(2) 貧困が次の世代に連鎖しないようにすること。

(3) 県、市町村、保護者、子育て支援団体、県民及び事業主が、家庭、学校、職場、地域社会等において、その役割を果たすとともに、必要に応じ連携協力すること。

(4) 結婚、出産及び子育てに関する個人の価値観が十分に尊重されるよう配慮すること。

(5) 地域の特性である自然環境、歴史及び伝統文化の豊かさ、人と人との結びつきの強さ、地域社会のまとまりの良さ等を十分に生かすこと。

(平28条例34・一部改正)

(県の責務)

第4条 県は、前条の基本的な考え方(以下「基本方針」という。)にのっとり、子育て支援等に関する施策を総合的に推進するものとする。

2 県は、子育て支援等に関し専門性の高い施策及び広域的な対応が必要な施策を実施するとともに、子育て支援等に取り組む人材の確保及び育成に努めるものとする。

3 県は、市町村及び子育て支援団体がそれぞれの役割を果たし、県、市町村及び子育て支援団体が連携協力して子育て支援等を行うことができるよう必要な助言及び適切な援助に努めるものとする。

4 県は、基本方針に対する保護者、県民及び事業主の理解を深め、県民及び事業主が子育て支援等に協力するよう努めるものとする。

(市町村の責務)

第5条 市町村は、子育てしやすい地域社会の形成に関し重要な役割を担っていることから、基本方針にのっとり、子育て支援等に取り組む人材の確保及び育成を図り、適切な子育て支援等に関する施策を実施するよう努めるものとする。

2 市町村は、県、保護者、子育て支援団体、県民及び事業主と連携協力して子育て支援等に取り組む体制を整備するよう努めるものとする。

(保護者の役割)

第6条 保護者は、自らが子育てについての第一義的責任を有することを自覚して、子どもを大切にし、子どもに生活に必要な習慣を身に付けさせるとともに、子どもが心身共に健やかに成長するよう努めるものとする。

2 保護者は、前項の役割を果たすため、それぞれの子どもに応じた最良の子育て支援等を受けるよう努めるものとする。

(子育て支援団体の役割)

第7条 子育て支援団体は、基本方針にのっとり、子育て支援等に関する専門的な知識及び経験を生かすとともに、子育て支援等を積極的に行うことにより、県民及び事業主の子育て支援等への関心と理解を深めるよう努めるものとする。

2 子育て支援団体は、県、市町村、保護者、県民及び事業主と連携協力して子育て支援等に取り組むよう努めるものとする。

(県民の役割)

第8条 県民は、基本方針にのっとり、子ども及び子育てに対する関心を高め、地域における子育て支援等に協力し、子どもを産み、育てやすい環境の整備に努めるものとする。

(事業主の役割)

第9条 事業主は、基本方針にのっとり、その事業の継続及び発展に努めることと併せ、労働者の職業生活と家庭生活との調和及び両立を図り、保護者の役割を果たすことができるようにするために必要な雇用環境の整備に努めるとともに、地域における子育て支援等に協力するよう努めるものとする。

2 事業主は、職場の慣行、雰囲気その他の事情により職場における出産及び子育てを支援する制度の活用が妨げられることのないよう、労働者の意識啓発及び労働者相互の理解促進に特に配慮し、希望する全ての女性が安心して子どもを産むことができる条件整備を行うとともに、男女を問わず子育てしやすい職場とするよう努めるものとする。

(平28条例34・一部改正)

(子育て支援等の推進)

第10条 県は、市町村と連携協力して、別表に掲げる施策その他必要な子育て支援等に関する施策を推進するものとする。

2 県は、子育て支援団体、県民及び事業主による子育て支援等の一層の促進のために必要な支援を行うものとする。

(子育て支援等推進計画)

第11条 知事は、子育て支援等に関する施策が総合的かつ着実に推進されるよう、施策の内容、実施方法等を示す計画(以下「子育て支援等推進計画」という。)を定めるものとする。

2 知事は、子育て支援等推進計画を策定するときは、必要に応じて、子育て王国とっとり会議、鳥取県青少年問題協議会及び鳥取県児童福祉審議会の意見を聴くものとする。

(令6条例14・令6条例40・一部改正)

(子育て王国とっとり会議)

第12条 次に掲げる事務を行わせるため、子育て王国とっとり会議を設置する。

(1) 前条第2項の規定により、知事に意見を述べること。

(2) こどもの貧困の解消に向けた対策の推進に関する法律(平成25年法律第64号)第10条第1項に規定する計画について知事に意見を述べること。

(3) その他この条例の施行に関する重要事項について調査審議すること。

2 子育て王国とっとり会議は、前項に掲げる事務のほか、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第72条第4項に掲げる事務を処理するものとする。

3 子育て王国とっとり会議の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

(平28条例34・令5条例2・令6条例35・一部改正)

(推進体制の整備)

第13条 県は、県、市町村、保護者、子育て支援団体、県民及び事業主が連携して子育て支援等に取り組むために必要な推進体制を整備するものとする。

(財政上の措置)

第14条 県は、子育て支援等に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

この条例は、公布の日から施行する。

(平成28年条例第34号)

この条例は、公布の日から施行する。

(平成30年条例第3号)

この条例は、公布の日から施行する。

(令和5年条例第2号)

この条例は、令和5年4月1日から施行する。

(令和6年条例第14号)

(施行期日)

1 この条例は、令和6年4月1日から施行する。ただし、次項及び附則第3項の規定は、公布の日から施行する。

(準備行為)

2 知事は、この条例の施行の日(以下「施行日」という。)前においても、改正後の子育て王国とっとり条例第11条第1項の規定の例により、子育て支援等推進計画を定めることができる。この場合において、知事は、同条第2項の規定の例により、子育て王国とっとり会議及び鳥取県青少年問題協議会の意見を聴くことができる。

3 前項の規定により定められた子育て支援等推進計画は、施行日において、第11条第1項の規定により定められた子育て支援等推進計画とみなす。

(令和6年条例第35号)

この条例は、子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第68号)の施行の日から施行する。

(施行の日=令和6年9月25日)

(令和6年条例第40号)

(施行期日)

1 この条例は、令和6年10月23日から施行する。

別表(第10条関係)

(平28条例34・平30条例3・令6条例14・一部改正)

区分

施策の主な内容

希望のかなう結婚、妊娠及び出産を支援する施策

1 結婚を望む者が、自らが望む形で地域を舞台に結婚することができるよう、出会いから結婚に至るまでを支援すること。

2 職場や地域において安心して喜びに満ちた結婚、妊娠及び出産ができる環境の整備を図ること。

3 妊娠、出産、不妊等に関する情報提供及び相談体制の充実、不妊治療への助成等により、妊娠及び出産に対して支援すること。

4 妊産婦及び乳幼児の保健及び医療並びに出産後の保健指導、育児に関する相談その他の援助に係る体制の充実、子どもの病気の予防、早期発見及び治療の支援、小児医療費等の助成等により、安全かつ安心な妊娠、出産及び子育てができる保健及び医療の整備を図ること。

5 子どもに対して、命の大切さ並びに性、妊娠及び出産に関する正しい知識を教える等、親になるために必要な教育を推進すること。

安心に満ちた子育てと豊かな子どもの学びを支援する施策

1 保護者の多様な希望に対応した保育所及び認定こども園における保育、幼稚園における預かり保育、事業所内保育、家庭的保育事業等を充実し、待機児童を出さないように、提供する保育の量を確保すること。

2 地域子育て支援拠点、放課後児童クラブ、放課後等デイサービス、放課後子ども教室、学校支援ボランティア、家庭教育支援、子育て家庭への訪問その他の地域での子育てを支援すること。

3 保育士、幼稚園教諭等を支援する体制の構築、これらの者の専門性を高める研修の実施等により、保育及び幼児教育の質を確保すること。

4 保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、特別支援学校及び児童発達支援を提供している施設(以下「保育所等」という。)において、発達段階に応じた基本的な知識及び技能を習得させ、それらを活用できる思考力、判断力、表現力等を育成する取組を充実させること。

5 子どもの体力向上及び健やかな体づくりのための取組並びに地域の文化財、歴史、伝統文化等に親しみ、理解を深める取組を推進すること。

6 保育所等において自他の命を大切にする心を育成する取組を充実させること。

7 保育所等における安全の確保並びに施設及び設備の整備、保護者に対する学習の機会及び情報の提供等により、保育及び教育に関する環境の改善を図ること。

8 保育所、認定こども園、幼稚園及び児童発達支援センターの保育料その他の子育てに関する経済的負担を軽減すること。

9 森、海、川等で行われる自然体験活動を基軸にした教育及び保育の取組を支援すること。

安心して子育てができるための職業生活と家庭生活の両立を支援する施策

1 県民の一人一人が、誇りを持ちながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭、地域社会等においても充実した生き方が実現できる社会を推進すること。

2 育児休業の取得に対する支援、子育てのための短時間勤務等の制度化、長時間労働の抑制、休暇等が取得しやすい職場風土づくり等により、安心して子育てができる就労環境の整備を図ること。

きずなを強め地域みんなで取り組む子育てを支援する施策

1 積極的に育児に参加する日を設定して啓発を行う等により、社会全体で子育てに取り組む機運の醸成を図ること。

2 特定非営利活動法人、子育てサークルその他の団体及び個人の子育て支援等の活動を促進すること。

3 子どもが多様な世代と交流しながら遊び、伝統芸能その他の活動を行う場を提供すること。

4 家庭における学習習慣及び正しい生活習慣の啓発、家庭教育に関する学習の機会及び情報の提供、祖父母等が子育てに関わりやすい環境の整備、地域において子育てに関わる青少年団体、公民館等の活動の支援及びそれを担う人材の育成等により、家庭及び地域の教育力の向上を図ること。

5 子どもたちへの本の読み聞かせ、図書館での児童サービスその他の子どもの情緒、知識及び好奇心を育む取組を支援及び促進すること。

6 企業、店舗等が行う子育て家庭へのサービスの提供その他の子育て支援等の取組を促進すること。

7 子どもが犯罪や交通事故の被害者にも加害者にもならないよう、地域社会全体で子どもを見守り、子どもが健全に育つ環境を整えること。

8 多様性が尊重され、全ての子どもが孤立することなく社会に自らの居場所を得られるよう、必要な支援を行うこと。

子どもの発達の程度に応じて自立を支援する施策

1 子どもの意見を聴く機会を十分に確保するとともに、子どもが権利の主体としてその意見が尊重される環境の整備を図ること。

2 子どもの非行を防止し、また、非行からの立ち直りを支援すること。

3 子どもが職業生活を順調に始められるようキャリア教育や雇用機会の確保を図ること。

特に支援が必要な子ども・家庭の健やかな生活を支援する施策

1 貧困の状況にある子どもに対する学習の支援及びその家庭に対する孤立の防止その他の支援を行うこと。

2 保護者がいない又は保護者に養育させることが適当でないと認められる子どもの社会的養護並びに社会的自立の支援及び援助を行うこと。

3 児童虐待の予防、早期発見、早期対応その他の児童虐待の対策を行うこと。

4 ひとり親家庭に対する相談体制の充実、就業支援等により、ひとり親家庭の自立を支援すること。

5 障がい児が地域で安全かつ安心に生活できるよう、人生の段階に応じた支援を行い、並びに障がい児に対する理解及び関心を深めること。

6 不登校、中途退学、いじめ被害、ひきこもり又は大人と同様の家事、家族の介護等その他の困難を抱える子どもに対して必要な支援を行うこと。

7 子どもの自死を防ぐために必要な支援を行うこと。

子育て王国とっとり条例

平成26年3月25日 条例第5号

(令和6年10月23日施行)