○みやこ町ケアラー支援条例
令和5年12月28日
条例第41号
ケアラーが、援助を受ける人とともに安心して人生を送ることができるようになることは、私たちの願いである。
しかしながら、ケアラーがケアをするのは、支援が必要な高齢者、障がい者及び障がい児、がん・難病・精神疾患等の慢性的な疾患を抱えた人及び医療的ケアを必要とする子どものほか、薬物・アルコール依存症の人、引きこもり状態の人、幼い兄弟姉妹等多岐にわたる。また、老老介護、老障介護、育児と介護を同時に担うダブルケア等、ケアの在り方も多様化している。
加えて、少子高齢化や核家族化の進展による社会環境の変化によって、家庭における介護等の人手が不足し、一人一人の家族が担う介護等の負担は大きくなっている。また、根強く残る「家族が介護するのが当たり前」という規範意識もあいまって、誰とも悩みを共有できずに社会から孤立し、ケアに伴う過度な負担により、自身の日常生活に支障が生じ、ケアラーと援助を受ける人の生活が成り立たなくなる「共倒れ」も危惧される。とりわけヤングケアラーは、本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話等を行っていることから、家庭内の問題として捉えられ、支援の手を差し伸べることが難しく、日常生活への支障はもとより、適切な教育の機会が確保されず、進学、就職等の人生の選択肢を狭めてしまうおそれがあるなど、自身の将来に大きな影響を及ぼすことも懸念される。
このような状況を踏まえ、ケアラーが抱える悩みを家庭内の問題ではなく社会問題として認識し、各関係機関が相互に連携を図りながら、町民一人一人がケアする側にも、される側にもなり得ることを自覚し、誰一人取り残されることなく、ケアラーを社会全体で支えていく必要がある。
ここに、一人一人のケアラーが自分らしく、健康で文化的な生活を営むことができる地域社会の実現を目指して、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、社会全体でケアラーを支援するための基本理念を定め、みやこ町(以下「町」という。)の責務並びに町民等、事業者及び関係機関の役割を明らかにするとともに、ケアラーの支援(以下「ケアラー支援」という。)に関する施策の基本となる事項を定めることにより、全てのケアラーが自分らしく、健康で文化的な生活を営むことができる地域社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) ケアラー 町民等のうち、高齢、身体上若しくは精神上の障がい又は疾病により援助を必要とする親族、友人その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の必要な援助を提供するものをいう。
(2) ヤングケアラー ケアラーのうち、18歳未満のものをいう。
(3) 町民等 町内に住所又は居所を有する者、町内に存する事務所又は事業所に通勤する者及び町内に存する学校に在学する者をいう。
(4) 事業者 町内で事業活動を行う個人及び法人をいう。
(5) 関係機関 介護、障がい者及び障がい児の支援、医療、教育、児童の福祉等に関する業務を行い、当該業務を通じてケアラーに関わる可能性がある機関をいう。
(6) 学校等 関係機関のうち、ヤングケアラーと関わり、又は関わる可能性がある学校その他教育に関する業務を行う機関をいう。
(基本理念)
第3条 ケアラー支援は、全てのケアラーが個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができるように行われなければならない。
2 ケアラー支援は、町、町民等、事業者及び関係機関が、それぞれの責務又は役割を果たし、相互に連携を図りながら、ケアラーが孤立することのないよう地域社会全体で支えるように行われなければならない。
3 ヤングケアラーに対する支援は、家庭内の問題として埋没させることなく、誰一人取り残されることのないよう社会全体で支えていく必要があることを念頭に、適切な教育の機会が確保され、かつ、心身の健やかな成長及び発達並びに自己決定に基づく主体的な生活の実現が図られるように行われなければならない。
(町の責務)
第4条 町は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、介護、福祉、医療、保健及び教育に関する制度その他ケアラー支援に関わる制度を勘案し、ケアラー支援に関する施策を総合的に実施するものとする。
2 町は、支援を必要としているケアラーの把握に努めるものとする。
3 町は、前2項の施策を円滑に実施することができるよう、ケアラーの意向を尊重するとともに、町民等、事業者、関係機関及び学校等と相互に連携を図るものとする。
(町民等の役割)
第5条 町民等は、基本理念にのっとり、ケアラーが置かれている状況及びケアラー支援の必要性についての理解を深め、ケアラーが孤立することのないように十分配慮するとともに、町が実施するケアラー支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(事業者の役割)
第6条 事業者は、基本理念にのっとり、ケアラー支援の必要性についての理解を深め、その事業活動を行うに当たっては、町が実施するケアラー支援に関する施策に協力するよう努めるものとする。
2 事業者は、雇用する従業員がケアラーである可能性があることを認識するとともに、従業員がケアラーであると認められるときは、当該ケアラーの意向を尊重しつつ、勤務するに当たっての配慮、情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(関係機関の役割)
第7条 関係機関は、基本理念にのっとり、ケアラー支援の必要性についての理解を深め、その業務を行うに当たっては、町が実施するケアラー支援に関する施策に積極的に協力するよう努めるものとする。
2 関係機関は、日常的にケアラーに関わる可能性がある立場にあることを認識し、関わりのある者及びその家族等がケアラーであると認められるときは、当該ケアラーの意向を尊重しつつ、ケアラーの健康状態、その置かれている生活環境等を確認し、支援の必要性の把握に努めるものとする。
3 関係機関は、支援を必要とするケアラーに対し、情報の提供、適切な他の関係機関への案内又は取次ぎその他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(学校等の役割)
第8条 学校等は、その業務を通じてヤングケアラーに関わる可能性があることを認識し、関わりのある者がヤングケアラーであると認められるときは、その意向を尊重しつつ、教育の機会の確保の状況、健康状態及び生活環境を確認し、支援の必要性の早期の把握に努めるとともに、早期の適切な支援につながるよう必要な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 学校等は、ヤングケアラーを早期に必要な支援につなげることができるよう、町及び関係機関と連携して、児童及び生徒に必要な周知及び啓発を行い、意識の醸成を図るとともに、適切な支援に努めるものとする。
(ケアラー支援に関する施策)
第9条 町は、ケアラー支援に関する施策を推進するため、次に掲げる事項を行うものとする。
(1) ケアラー支援に関する広報及び啓発
(2) ケアラー支援体制の構築
(3) 前2号に掲げるもののほか、ケアラー支援に関する施策を推進するために必要な事項
(委任)
第10条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、町長が別に定める。
附則
この条例は、令和6年4月1日から施行する。