○町行分収造林の今後の取り扱い方針について
平成23年9月8日
告示第69号
1 取り扱い方針決定の背景
戦後日本の木材需要は、戦災復興や紙パルプ需要の拡大に始まり、昭和30年代には高度経済成長期に突入し拡大を続けた。しかしながら需要に応えるために進められた民有林の造林は、土地所有者の資金や経営力不足等の課題により、国の計画どおりには進捗しなかった。
そこで、昭和33年に「分収造林特別措置法」が制定され土地所有者以外の資金や経営技術を導入する分収造林事業が開始された。その後都市部と農山村部との所得格差の解消や、エネルギー革命に伴う薪炭生産者の失業対策などの産業・地域振興施策も加わり、昭和39年には「林業基本法」が制定され、総合的な林業施策が推進されることとなった。
これを受け地方では、自営造林が困難な土地に、広葉樹に比べ生長量の大きい針葉樹を植え、森林資源の造成を図る事を目的にした拡大造林が推進されることになり、県、林業公社、市町村等を造林者や費用負担者とする分収造林契約が拡大した。
一方、戦後増加した木材需要は昭和48年の1億1,758万m3をピークに減少し、平成21年には6,321万m3とピーク時の54%にまで減少した。加えて昭和39年に木材製品全品目の輸入が自由化されたことで徐々に国産材の自給率が減少し、近年持ち直してはいるものの平成21年には28%となっている。
また立木価格については、住宅用材の需要が減少し土木建築・梱包用材などが増加したこと、住宅用材も柱材や床材などの高級材の需要が減少し合板・集成材などの輸入製品・半製品への需要が増加したことなどの要因から、スギの山元立木価格(全国平均)は昭和55年の22,707円/m3をピークに下落し、平成22年には2,654円まで下落、ピーク時の12%となっている。
こうして拡大の一途を辿った分収造林事業は、需要の落ち込みと価格の低迷により、契約期間で伐採しても十分な収入が見込めず、この間費用負担してきた造林費用が回収できない上に、土地所有者が負担する伐採跡地の再造林費用も賄えない状況にある。
加えて、山林の持つ多面的な機能の維持や防災面を考慮すると契約に基づく伐採は困難な状況にあり、全国的に契約期間の延長や解約などの動きが広がっている。
2 基本方針
邑南町の町行分収造林事業は、「分収林特別措置法」(昭和33年4月15日法律第57号)に基づき、また林野庁長官通知「分収造林の推進について」(昭和33年6月2日33林野第6288号)により、旧瑞穂町においては「瑞穂町の行う分収造林施行に関する条例」(昭和39年8月19日条例第24号)により、旧石見町においては「町行分収造林条例」(昭和46年3月18日条例第19号)により、旧羽須美村は国の法律・要綱に基づき昭和44年から、それぞれ町行・村行分収造林が進められ、現在の契約は209団地・約972ha(平成22年度末)となっている。
契約の多くは期間を45年ないし50年で締結しているが、旧瑞穂の初期の契約に40年契約が3団地あり、これが平成17・18年に、45年契約が平成22年に1件契約期限を迎えている。合併後の緊縮財政により実施を見送っていた森林現況調査と収益性評価を平成22年度から国の緊急雇用事業を活用実施し、このたび別紙「町行分収造林契約の変更処理基準」及び「町行分収造林契約変更事務処理要領」を定めた。
今後は既契約造林地の適正な管理を進めつつ、処理基準に基づき事業の円滑な終結に努めることとする。
3 契約満了時における取り扱い方針
「町行分収造林契約の変更処理基準」をもとに、契約期間満了に近い団地から順に契約変更に関する土地所有者との協議を開始する。なお、諸般の事情により協議を延期した場合においては、契約終了の3年前には再度協議を開始することとし、必要であれば立木評価調査を改めて実施する。具体の手続については別に定める「町行分収造林契約変更事務処理要領」による。
(1) 伐採による契約終了について
立木評価調査の結果、契約期間満了時において立木伐採による収益が見込め、併せて土地所有者が分収金により再造林費用が賄える場合は、契約期間満了時において立木を売却処分し、契約を終了する。
(2) 契約期間変更(延長)について
立木評価調査の結果、下記の場合は契約の延長により対応することとする。延長する場合の期間は、当初契約日から80年間を基準とし、土地所有者と協議の上、決定する。ただし情勢変化等により、延長契約期間内であっても、収益が見込める場合は売却処分に努めるものとする。
ア 契約期間満了時に伐採による収益は見込めるものの、土地所有者が分収金により再造林費用を賄えない場合
イ 契約満了時には伐採による収益が見込めないものの、契約を延長することで、将来的には収益が見込まれる場合
(3) 無償解約による契約終了について
評価調査の結果、契約期間満了時及び契約延長時に伐採による収益が見込めない場合は、無償解約により契約を終了する。
(4) 所有者協議について
上記(1)~(3)をもとに土地所有者との協議をすすめるものの、契約終了までの間に、木材の利用方法に新たな可能性がでてきた場合、土地所有者からの別の提案がある場合、森林法等関係法令により方針どおり契約を履行することが困難な場合及び上記(1)~(3)による処理が困難な場合は、土地所有者及び町の双方に不利益が生じないよう対応することとする。
(5) 解約後の措置について
邑南町森林整備計画において設定する森林の有する機能に重大な支障を及ぼすことがないよう、解約後の森林整備を図ることとする。