○富山市環境基本条例
平成17年4月1日
富山市条例第177号
目次
第1章 総則(第1条―第9条)
第2章 環境の保全及び創造に関する施策に係る基本方針等(第10条―第13条)
第3章 環境の保全及び創造を推進するための施策(第14条―第27条)
第4章 地球環境保全の推進及び環境の保全に関する国際協力(第28条・第29条)
第5章 環境の保全及び創造に関する施策の推進体制の整備(第30条)
第6章 富山市環境審議会(第31条―第38条)
附則
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに市、事業者、市民及び滞在者の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の市民の安全で健康かつ文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「環境への負荷」とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この条例において「地球環境保全」とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに市民の安全で健康かつ文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この条例において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁(水質以外の水の状態又は水底の底質が悪化することを含む。)、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下(鉱物の掘採のための土地の掘削によるものを除く。)及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生ずることをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全及び創造は、快適で恵み豊かな環境が人間の安全で健康かつ文化的な生活に欠くことができないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており、人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が快適で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。
2 環境の保全及び創造は、環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全及び創造に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、快適で恵み豊かな環境を確保しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されること及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。
3 地球環境保全が人類共通の課題であるとともに市民の安全で健康かつ文化的な生活を将来にわたって確保するうえでの課題であること及び経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、富山市の特性を生かし、すべての者の参加と国際的な協力の下に積極的に推進されなければならない。
(市の責務)
第4条 市は、前条に定める環境の保全及び創造についての基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全及び創造に関し、市民の意見を尊重して、地域の自然的社会的条件に応じた基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害若しくは地下水の保全上の支障を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2 事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。
3 前2項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
4 前3項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(市民の責務)
第6条 市民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(滞在者の責務)
第7条 旅行者その他の滞在者は、基本理念にのっとり、環境への負荷を低減するよう自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力するものとする。
(財政上の措置等)
第8条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を実施するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
(年次報告等)
第9条 市長は、毎年、市議会に、環境の状況並びに環境の保全及び創造に関して講じた施策等に関する年次報告書を提出しなければならない。
第2章 環境の保全及び創造に関する施策に係る基本方針等
(施策の策定等に係る基本方針)
第10条 環境の保全及び創造に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。
(1) 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。
(2) 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。
(3) 人と自然との豊かな触れ合いが保たれるとともに、身近な水や緑、優れた景観等の保全及び創造、歴史的文化的資源の活用等により、地域の個性を生かしたうるおいと安らぎのある安全で快適な環境が創造されること。
(4) 廃棄物の減量及び適正処理、資源及びエネルギーの消費の抑制及び循環的な利用等により、環境への負荷が低減される社会が構築されること。
(環境基本計画の策定)
第11条 市長は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 環境の保全及び創造に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
(2) 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 市長は、環境基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ、富山市環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(市の施策の策定等に当たっての配慮)
第12条 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全及び創造について配慮しなければならない。
(国及び他の地方公共団体との協力)
第13条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を講ずるに当たっては、国及び他の地方公共団体と協力して、これを行うように努めるものとする。
第3章 環境の保全及び創造を推進するための施策
(環境影響評価の推進)
第14条 市は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(規制の措置)
第15条 市は、公害及び地下水の保全上の支障を防止するため、その原因となる行為に関し、事業者等の遵守すべき基準を定めること等により必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。
2 市は、自然環境の保全を図るため、自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、その支障を防止するために必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。
3 第1項に定めるもののほか、市は、人の健康又は生活環境に係る環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。
(経済的措置)
第16条 市は、環境への負荷を生じさせる活動又は生じさせる原因となる活動を行う者がその活動に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとることとなるよう誘導することにより環境の保全上の支障を防止するため、特に必要があるときは、適正な経済的な措置を講ずるように努めるものとする。
(施設の整備その他の事業の推進)
第17条 市は、下水道、廃棄物の公共的な処理施設、環境への負荷の低減に資する交通施設(移動施設を含む。)その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備及び森林の整備その他の環境の保全上の支障の防止に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、公園、緑地、河川その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
3 市は、前2項に定める公共的施設の適切な利用を促進するための措置その他これらの施設に係る環境の保全上の効果が増進されるために必要な措置を講ずるものとする。
(快適な環境の保全及び創造)
第18条 市は、文化財、優れた景観その他の地域の個性を生かしたうるおいと安らぎのある快適な環境を保全し、及び創造する事業を推進するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
2 市は、快適な環境を確保するうえでの支障を防止するため、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(良好な水環境の保全及び創造)
第19条 市は、水源の保全、雨水の地下浸透施設その他の地下水のかん養に資する施設の建設、水資源の合理的利用、歴史的又は文化的に生活と深いかかわりのある水の保全等が促進されることにより、良好な水環境の保全及び創造が図られるように、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、地下水の保全を図るため、他の地方公共団体及びその利用者と連携して、必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(廃棄物の減量等の促進等)
第20条 市は、廃棄物の減量及び適正処理、資源及びエネルギーの消費の抑制及び循環的な利用等が促進されることにより、環境への負荷の低減が図られるように、必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、市の施設の建設及び維持管理その他の事業の実施に当たっては、廃棄物の減量及び適正処理、資源及びエネルギーの消費の抑制及び循環的な利用等により、環境への負荷の低減に努めるものとする。
(事業者の行う環境の保全のための活動の促進等)
第21条 市は、事業者が、その事業活動に伴う環境への負荷の低減及び環境の保全に関し、必要な体制の整備を行い、並びに自ら目標を定め、実行し、及びその実行状況を評価することの普及を図るため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
(環境への負荷の低減に資する事業活動の促進)
第22条 市は、環境への負荷の低減に資する装置、製品、役務又は技術を開発し、又は供給する事業活動を促進するため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるものとする。
(教育及び学習の推進等)
第23条 市は、環境の保全及び創造に関する教育及び学習の推進並びに広報活動の充実により事業者及び市民が環境の保全及び創造についての理解を深めるとともに、事業者及び市民の自発的な活動を行う意欲が増進されるように、教育及び学習の場の提供、指導者の確保その他の必要な措置を講ずるものとする。
(民間団体等の自発的な活動の促進)
第24条 市は、事業者、市民又はこれらの者の組織する民間の団体(次条において「民間団体等」という。)が自発的に行う美化活動、緑化活動、再生資源に係る回収活動、環境衛生思想の普及活動その他の環境の保全及び創造に関する活動が促進されるように、その活動の支援に関し団体の育成、知識の普及その他の必要な措置を講ずるものとする。
(調査研究等)
第26条 市は、環境の状況の把握その他の環境の保全及び創造に関する施策の策定に必要な調査研究に努めるものとする。
2 市は、前項の調査研究に当たっては、国、他の地方公共団体及び民間の研究機関との連携に努めるものとする。
(監視等の体制の整備)
第27条 市は、環境の状況を把握し、及び環境の保全に関する施策を適正に実施するために必要な監視、測定、検査等の体制の整備に努めるものとする。
第4章 地球環境保全の推進及び環境の保全に関する国際協力
(地球環境保全の推進)
第28条 市は、市、事業者及び市民が地球環境保全に資するように行動するための目標、それぞれの役割、具体的な取組み等に関する計画を定め、その普及及び啓発に努めるなど、地球環境保全に資する施策を推進するように努めるものとする。
(地球環境保全に関する国際協力)
第29条 市は、地球環境保全に関する国際協力を推進するように努めるものとする。
2 市は、日本海及びその周辺地域における環境の保全に関する国際協力を推進するため、人材の派遣及び受入れ、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
3 市は、前2項の国際協力を推進するに当たっては、国際機関、国、他の地方公共団体その他関係団体と協力するものとする。
第5章 環境の保全及び創造に関する施策の推進体制の整備
第30条 市は、環境の保全及び創造に関する施策を市、事業者及び市民の協力の下に推進するため、必要な体制の整備に努めるものとする。
第6章 富山市環境審議会
(設置)
第31条 環境基本法(平成5年法律第91号)第44条の規定に基づき、富山市環境審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(組織)
第32条 審議会は、委員20人以内で組織する。
2 委員は、学識経験のある者及び関係機関の職員その他市長が必要と認める者のうちから市長が委嘱する。
3 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
(会長)
第33条 審議会に会長を置き、委員の互選によりこれを定める。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 会長に事故があるとき、又は欠けたときは、会長があらかじめ指名する委員がその職務を代理する。
(会議)
第34条 審議会は、会長が招集し、その会議の議長となる。
2 審議会は、委員の過半数が出席しなければ会議を開くことができない。
3 審議会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(専門部会)
第35条 審議会に、専門の事項を調査審議させるため、専門部会を置くことができる。
2 専門部会は、委員及び専門委員若干人で組織する。
3 専門部会に属する委員は、会長が指名し、専門委員は、会長の推薦により、学識経験のある者のうちから市長が委嘱する。
(資料提出の要求等)
第36条 審議会は、その所掌事務を行うため必要があると認めるときは、市長その他関係機関等に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
(庶務)
第37条 審議会の庶務は、環境部において処理する。
(細則)
第38条 この条例に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮って定める。
附則
この条例は、平成17年4月1日から施行する。