○豊中市自治基本条例
平成19年3月30日
条例第4号
目次
前文
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 自治の主体
第1節 市民及び事業者(第3条―第5条)
第2節 市議会(第6条―第8条)
第3節 行政機関(第9条―第11条)
第3章 自治の運営
第1節 地域(第12条)
第2節 市政(第13条―第23条)
第4章 参画と協働
第1節 参画(第24条―第26条)
第2節 協働(第27条―第29条)
第5章 市民投票(第30条)
第6章 国又は他の地方公共団体との連携(第31条)
第7章 この条例の位置付け(第32条)
附則
私たちは,今日に至るまで互いに協力し,話合いを積み重ねながら,困難を乗り越え,夢をかたちにするために,地域に根ざし,さらには地域を越えて,教育や福祉,環境をはじめ,様々な分野における自治の充実を図ってきました。
そして今,自ら課題に取り組む市民が,新たな公共の担い手として,お互いに,また事業者や市と連携して取組を広げながら豊中の自治の力を高めようと努めています。
また,それぞれの自治体には,地方自治制度の大きな改革の流れの中で,憲法の掲げる地方自治の本旨の実現に向けて,独自の創意工夫により自己決定,自己責任による自治を充実させていくことが求められています。
私たちは,年齢や性別,国籍などの違いを問わず,多様な個性を持った人々がお互いの人権を尊重しながら,平和に共存・共生する持続可能な地域社会を築いていくために,一人ひとりが持てる力を十分に発揮していきたいと考えます。
こうした認識に立って,私たちは,
自分の住むまちに関心を持ち,
まちの課題を自らの課題として受け止め,
情報を共有し,
お互いを尊重しながら話合いを積み重ね,
よって,まちの課題に対して,
より良い解決方法を見つけ出し,
責任を持って実行していく
ことを旨として行動することを決意します。
ここに私たちは,市民主体のまちづくりを進めることにより,市民自治を発展させ,次の世代に伝えていくため,この条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は,市民主権の理念にのっとり,自治の基本原則及び自治の主体のあり方を明らかにするとともに,その主体間における参画と協働の原則を定めることにより,自己決定,自己責任による自治の運営を実現し,もって自立した豊かな地域社会の創造に資することを目的とする。
(自治の基本原則)
第2条 自治は,次に掲げる基本原則に即して推進されなければならない。
(1) 情報共有の原則 市民,事業者及び市は,市政に関する情報を共有すること。
(2) 参画の原則 市民及び事業者の参画の下で市政が行われること。
(3) 協働の原則 市民,事業者及び市は,互いを理解し,尊重し,対等な立場で連携して課題に取り組むこと。
2 地域の課題は,地域の特性に応じて市民及び事業者が解決に向けた取組を担うとともに,市がその取組に必要な施策を実施することにより解決を図るものとする。
第2章 自治の主体
第1節 市民及び事業者
(市民の権利)
第3条 市民は,市政に参画する権利を有する。
2 市民は,市政に参画する権利を行使するに当たっては,公共の視点に立つとともに,他の市民の市政に参画する権利に配慮しなければならない。
3 市民は,市政に参画し,又は参画しないことを理由として不利益な取扱いを受けない。
(市民の責務)
第4条 市民は,地域の課題に関心を持ち,事業者及び市と協力して,その解決に向けた取組に努めなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は,自らも地域社会の一員であることを自覚し,市民及び市と協力して,地域の課題の解決に向けた取組に努めなければならない。
第2節 市議会
(市議会の権限等)
第6条 市議会は,市民の代表による意思決定機関として,市の政策形成並びに市政運営の監視及びけん制に係る機能を果たすものとする。
2 市議会は,条例の制定及び改廃,予算,決算の認定等の議決並びに市の事務に関する検査及び監査の請求等の権限を有する。
(市議会の責務)
第7条 市議会は,市民意思の反映を図るため,前条第2項に規定する権限を効果的に行使するよう努めなければならない。
2 市議会は,市民への説明責任を果たすため,積極的な情報提供その他の施策により開かれた議会運営に努めなければならない。
(市議会議員の責務)
第8条 市議会議員は,市民の代表として,前2条に規定する市議会の権限等及び責務がより良く果たされるよう,誠実に職務を遂行するとともに,自ら審議能力の向上を図るよう努めなければならない。
第3節 行政機関
(市長の権限)
第9条 市長は,市の執行機関として,事務を管理するとともに執行する権限を有する。
2 市長は,市を統轄し,これを代表する。
(市長の責務)
第10条 市長は,市民の信託に誠実にこたえるため,政策を実現するための施策及び計画を策定し,人員,予算その他の資源を適切に配分して,その推進に努めなければならない。
2 市長は,市民への説明責任を果たすため,前項の施策及び計画の推進状況を毎年公表しなければならない。
(職員の責務)
第11条 職員は,全体の奉仕者として適法かつ公正に職務を遂行し,その能力の向上を図るとともに,市民自治を推進するため,最大限にこれを発揮するよう努めなければならない。
第3章 自治の運営
第1節 地域
(地域自治)
第12条 市民及び事業者は,地域における自治を推進するための組織(以下この条において「地域自治組織」という。)を自主的に形成することができる。
2 地域自治組織は,地域の安全,教育,福祉,環境その他の課題について協議し,その結果を踏まえ,協力,連携及び相互支援を図りながら解決に向けて取り組み,地域自治の発展に寄与するよう努めるものとする。
3 市は,地域自治組織の形成及び活動を支援するため,地域における人材の育成,助成,情報の提供その他必要な措置を講じなければならない。
4 市は,施策の決定及び実施に当たっては,関係する地域自治組織の意思を反映するため,必要な措置を講じなければならない。
第2節 市政
(市政運営の基本原則)
第13条 市は,市政運営に当たっては,市民及び事業者の負担に基づくものであることにかんがみ,最大限に効率性を発揮して行わなければならない。
2 市は,市民の視点で公正な市政運営を推進し,市民の権利利益の保護を図らなければならない。
3 市は,市政運営の透明性の向上を図り,市民から信頼される開かれた市政を推進しなければならない。
(総合計画)
第14条 市は,事務を処理するに当たっては,総合的かつ計画的な行政運営を図るため,基本構想,基本計画及び実施計画を内容とする総合計画を定め,これに即して行うようにしなければならない。
2 市は,特定の施策に係る計画を定めようとするときは,前項の総合計画に適合するようにしなければならない。
(行政組織)
第15条 市は,行政組織の編成に当たっては,社会経済情勢の変化に迅速かつ柔軟に対応するため,事務及び事業の運営が簡素かつ効率的なものとなるようにするとともに,相互の連携が保たれるように十分配慮しなければならない。
(行政手続)
第16条 市は,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,市民の権利利益の保護に資するよう,行政手続について必要な措置を講じなければならない。
(政策法務)
第17条 市は,法令等の調査研究を重ね,自主的かつ適正な解釈及び運用を行うことにより,自主立法権等を活用する政策法務の推進を図らなければならない。
(法令遵守)
第18条 市は,市政運営における公正の確保と透明性の向上を図るため,法令等を誠実に遵守するとともに,公正な職務執行を確保するための必要な措置を講じなければならない。
(情報公開及び個人情報の保護)
第19条 市は,市政に関する情報について,市民及び事業者との共有を図るため,情報公開を総合的に推進しなければならない。
2 市は,個人の権利利益を保護し,信頼される市政を推進するため,個人情報の保護に関し必要な措置を講じなければならない。
(行政評価)
第20条 市は,主要な施策の効果を自ら評価し,その結果を当該施策に適切に反映させなければならない。この場合において,施策の効果は,当該施策の特性に応じた合理的な手法を用い,できる限り定量的に把握しなければならない。
2 市は,前項の規定により評価を実施したときは,速やかにその結果を公表する。この場合において,市は,評価の結果について市民の意見を聴くため,必要な措置を講じなければならない。
(人材育成)
第21条 市は,職務に対する高い意欲及び能力を持った職員を育成するため,総合的かつ計画的に人材育成に係る施策を実施しなければならない。
(財政運営)
第22条 市は,計画的かつ健全な財政運営を図るため,資産及び負債,行政コストその他多様な指標により財政状況を的確に把握するとともに,社会経済情勢の動向を踏まえた中期的な財政見通しを作成しなければならない。
2 市は,前項の財政状況及び財政見通しを作成したときは,速やかに公表する。
(危機管理)
第23条 市は,危機事象の発生に備え,総合的かつ機動的な活動を行うことができる体制等を整備するとともに,その対応に当たっては,市民及び事業者と連携を図らなければならない。
第4章 参画と協働
第1節 参画
(参画における原則)
第24条 市は,幅広い市民及び事業者の参画を得て市政を推進するため,施策の企画,実施,評価及び改善の過程において,多様な手段による参画の機会を設けるよう努めなければならない。
2 市は,前項に規定する目的を達するため,必要な情報を適時に,かつ,適切な方法で市民及び事業者に提供するよう努めなければならない。
3 市は,市政への参画に関する市民及び事業者の意見,要望等については,適切に対処しなければならない。
(意見公募手続)
第25条 市は,市の基本的な制度又は事項を定める条例,計画等を策定するに当たっては,市民及び事業者から意見の提出を受け,提出された意見を考慮して意思決定を行うため,意見公募手続を整備しなければならない。
(審査会等の委員の選任)
第26条 市は,審査会,審議会,協議会等(次項において「審査会等」という。)の委員を選任するに当たっては,男女の構成比率,年齢等に留意し,幅広い市民及び事業者の参画に配慮した委員構成となるよう努めなければならない。
2 市は,審査会等の委員の全部又は一部を公募する。ただし,法令等に特別の定めがあるときその他やむを得ない理由があるときは,この限りでない。
第2節 協働
(協働における原則)
第27条 市民,事業者及び市は,それぞれ互いに協働しようとするときは,次に掲げる基本原則に基づき行わなければならない。
(1) 対等な立場に立ち,相互に理解を深めること。
(2) 目的を共有するとともに,協働の企画,実施,評価及び改善の過程並びにその成果を公開すること。市にあっては,これらの情報を適時に,かつ,適切な方法で公開すること。
2 市は,前項に定めるもののほか,市民及び事業者と協働するに当たっては,これらの者の自発性及び自主性を尊重しなければならない。
(協働の推進)
第28条 市は,市民,事業者及び市との間における協働を進めるため,その仕組みづくりその他必要な施策を実施しなければならない。
(パートナーシップ協定)
第29条 市民,事業者及び市は,協働によるまちづくりを進めるため,計画の策定,実施又は評価の過程において,相互の役割,責務等を定めた協定(次項において「パートナーシップ協定」という。)を締結することができる。
2 市民,事業者及び市は,パートナーシップ協定に定める内容を誠実に履行しなければならない。
第5章 市民投票
(市民投票)
第30条 市内に住所を有する満18歳以上の者(外国人を含む。第3項において同じ。)は,将来にわたって市に重大な影響を及ぼすと考えられる事項に関し,その総数の6分の1以上の者の連署をもって,市長に対し市民投票の実施を請求することができる。
2 市長は,前項の規定による請求があったときは,市民投票を実施しなければならない。
3 市民投票の投票権を有する者は,市内に住所を有する満18歳以上の者とする。
4 市長及び市議会は,市民投票の結果を尊重しなければならない。
5 市民投票の実施に関する手続その他必要な事項は,別に条例で定める。
第6章 国又は他の地方公共団体との連携
(国又は他の地方公共団体との連携)
第31条 市は,共通する課題を解決するため,国,大阪府又は他の地方公共団体と相互に連携を図りながら協力するものとする。
第7章 この条例の位置付け
(この条例の位置付け)
第32条 この条例は,自治の基本を定めるものであり,市民,事業者及び市は,誠実にこれを遵守しなければならない。
2 市は,条例の制定及び改廃,法令等の解釈及び運用並びに市政運営に当たっては,この条例の趣旨を最大限に尊重しなければならない。
附則
3 市長は,前項の検討の結果を公表するとともに,その結果に基づき,必要な措置を講じなければならない。