○つくば市環境基本条例
平成10年10月1日
条例第23号
目次
第1章 総則(第1条―第6条)
第2章 環境基本計画(第7条・第8条)
第3章 市が講じる環境の保全のための施策(第9条―第17条)
第4章 市民等の参加及び協働による環境の保全への取組(第18条―第23条)
第5章 地球環境保全の推進(第24条・第25条)
附則
私たちは、筑波山を望む豊かな自然の恵みの下で、生命を育み、日々の暮らしを営んできた。
近年、社会経済構造の変化や都市化の進展に伴い、私たちの生活が便利で活力の満ちたものになってきている一方で、資源やエネルギーの大量消費、大量生産、大量廃棄という現象がもたらされ、それらが環境への負荷となって、自然の生態系にまで影響が及ぶようになり、私たちの生命や生活の基盤である恵み豊かな環境が地球的な規模で損なわれようとしている。
私たちは、安全で快適な生活を営むために健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する権利を有するとともに、その環境を将来の世代に引き継ぐことができるよう環境を保全する責務を担っている。
今、私たちは、環境への負荷が人の様々な活動から生じていることを認識し、自らの生活や行動を環境への負荷の少ないものに変えていき、人と自然との共生を基本として、限りある自然を維持し、失われた自然を復元し、都市化の進展をこれに融和させ、やすらぎやゆとりの感じられる社会の創造を目指して、最大限の努力を払うことが求められている。
このような考え方に立って、市民、事業者、市の機関が一体となり、健全で恵み豊かな環境を保全するとともに、環境への負荷の少ない持続的な発展が可能なつくば市をつくり上げていくため、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、環境の保全について、基本理念を定め、並びにつくば市(以下「市」という。)、事業者及び市民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の世代の市民の安全で快適な生活の確保に寄与するとともに、人類の福祉に貢献することを目的とする。
(1) 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
(2) 地球環境保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全をいう。
(3) 公害 環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生じる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下、悪臭等によって人の健康又は生活環境(人の生活に密接な関係のある財産並びに人の生活に密接な関係のある動植物及びその生育環境を含む。以下同じ。)に係る被害が生じることをいう。
(基本理念)
第3条 環境の保全は、次に掲げる基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり推進されなければならない。
(1) 健全で恵み豊かな環境が市民の安全で快適な生活に欠くことができないものであることにかんがみ、これを将来にわたって維持し、及び向上させ、かつ、現在及び将来の世代の市民がこの恵沢を享受することができるように積極的に推進すること。
(2) 人と自然とが共生することができる恵み豊かな環境を確保するために、樹林、農地、水辺等における多様な自然環境を有効に活用しつつ保全し、環境への負荷の少ない持続的に発展することができる社会の構築を目指すこと。
(3) 市、事業者及び市民がその事業活動及び日常生活において環境の保全を優先的に配慮し、それぞれの責務に応じた役割分担の下に、協働によってこれに取り組むこと。
(4) 地球環境保全が人類共通の極めて重要な課題であることから、市、事業者及び市民が地球環境保全を自らの問題としてとらえ、国際的な連携及び協力の下に推進すること。
(市の責務)
第4条 市は、基本理念にのっとり、環境の保全についての総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
2 市は、基本理念にのっとり、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境への負荷の低減その他の環境の保全に積極的に努めなければならない。
(事業者の責務)
第5条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴うばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講じる責務を有する。
2 事業者は、基本理念にのっとり、自らの責任と負担において、その事業活動に伴って生じる廃棄物の発生を抑制し、再利用等を図ることにより、その減量を行うとともに、廃棄物を適正に処理する責務を有する。
3 事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され、又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するよう努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
4 前3項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(市民の責務)
第6条 市民は、基本理念にのっとり、その日常生活に伴う廃棄物の排出抑制、騒音の発生防止、屋外燃焼行為の自粛等による環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、市民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、市が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
第2章 環境基本計画
第7条 市長は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、環境の保全に関する総合的かつ計画的な目標及び施策の大綱について定めるものとする。
3 市長は、環境基本計画を定めるに当たっては、あらかじめ市民の意見を反映するための必要な措置を講じるとともに、つくば市環境審議会の意見を聴かなければならない。
4 市長は、環境基本計画を定めたときは、速やかにこれを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
第8条 市は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、各種の施策相互の連携を図りつつ環境基本計画に基づき総合的かつ計画的に行わなければならない。
第3章 市が講じる環境の保全のための施策
(公害の防止等)
第9条 市は、市民の健康の保護及び生活環境の保全のため、公害の防止に関し必要な措置を講じなければならない。
2 市は、前項に定めるもののほか、市民の健康又は生活環境を損なうおそれのある廃棄物の排出、騒音の発生、化学物質等による大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染等による環境の保全上の支障を防止するため、必要な措置を講じなければならない。
(自然環境の保全)
第10条 市は、樹林、農地、水辺等における多様な自然環境の適正な保全に努めるとともに、野生動植物の生息又は生育に配慮し、生態系の多様性の確保に努めなければならない。
(資源の循環的利用等の促進)
第11条 市は、環境への負荷への低減を図るため、廃棄物の処理の適正化を推進するとともに、事業者及び市民による廃棄物の減量、資源の循環的な利用及びエネルギーの適切かつ有効な利用が促進されるよう必要な措置を講じるものとする。
(規制の措置)
第12条 市は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講じるものとする。
(監視、測定等の体制の整備)
第13条 市は、環境の状況を的確に把握し、及び環境の保全に関する施策を適正に実施するため、必要な監視、測定等の体制の整備に努めるものとする。
(調査、研究等の推進)
第14条 市は、環境の保全に関する情報の収集に努めるとともに、科学的な調査及び研究並びにそれらの成果の普及に努めるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力)
第15条 市は、環境の保全を図るための広域的な取組を必要とする施策について、国及び他の地方公共団体と協力して、その推進に努めるものとする。
(環境影響評価の推進)
第16条 市は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講じるものとする。
(環境白書の作成等)
第17条 市長は、毎年、環境の状況、環境の保全に関する施策の実施状況等を明らかにしたつくば市環境白書を作成し、公表するものとする。
第4章 市民等の参加及び協働による環境の保全への取組
(情報の提供及び市民等の意見の反映)
第18条 市は、環境の状況その他の環境の保全に関する情報を適切に提供するよう努めるとともに、環境の保全に関する施策に市民及び事業者の意見を反映させるため必要な措置を講じるものとする。
(市民及び事業者との連携)
第19条 市は、環境の保全に関する施策を効果的に推進するため、市民及び事業者の参加及び協力を求める等これらの者との連携に努めるものとする。
2 市は、市民及び事業者と協力して、環境の保全に関する活動を積極的に推進するための体制の整備に努めるものとする。
(環境の保全に関する教育、学習等)
第20条 市は、環境の保全に関する教育及び学習の振興並びに啓発活動の充実により市民及び事業者が環境の保全についての理解を深めるとともに、これらの者の環境の保全に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講じるものとする。
(市民及び事業者の自発的な活動の支援)
第21条 市は、市民及び事業者が自発的に行う緑化活動、再生資源の回収に係る活動その他環境の保全に関する活動が促進されるようにするため、必要な措置を講じるものとする。
(経済的措置)
第22条 市は、市民及び事業者が環境への負荷の低減を図るために行う施設の整備、研究開発、その他これらに類する活動を促進するため特に必要があるときは、助成その他の措置を講じるものとする。
(事業者の環境管理に関する制度の導入の促進)
第23条 市は、環境に影響を及ぼすおそれのある事業を実施する事業者が、その事業の実施に当たり、環境への負荷の低減の目標を定め、その目標の達成状況を検証し、その目標を見直すことを目的とした環境管理に関する制度の導入の促進に関し必要な措置を講じるものとする。
第5章 地球環境保全の推進
(地球環境保全の推進)
第24条 市は、地球温暖化の防止、オゾン層の保護、酸性雨の調査等の地球環境保全に関する施策の推進に努めるものとする。
(地球環境保全に関する国際協力)
第25条 市は、国際機関、国、他の地方公共団体、市民及び事業者と連携し、地球環境保全に関する国際協力の推進に努めるものとする。
附則
この条例は、公布の日から施行する。