○岐阜市子どもの権利に関する条例
平成18年3月27日
条例第15号
目次
前文
第1章 総則(第1条・第2条)
第2章 一人の人間として持っている子どもの権利(第3条―第8条)
第3章 子どもの権利を保障する責務(第9条―第14条)
第4章 権利の自覚と他の人の権利を尊重する責務(第15条)
第5章 子どもの権利推進委員会(第16条)
第6章 雑則(第17条)
附則
人は、だれもが生まれながらにして幸せに生きる権利を持っています。
子どもは、生まれたときから一人ひとりが権利の主体であり、大人の都合やその場の感情などでその権利が侵害されることがあってはなりません。
私たちは、子ども一人ひとりが、本来持っている力を発揮して、いきいきと自分の可能性を追求し、幸せな人生を送ることができるよう、子どもの権利の保障に最大限努めます。
そのために、子どもの権利を保障し、支援するまちづくりに取り組みます。
子どもの皆さん。
この条例においては、子ども一人ひとりが生まれながらに権利の主体であることを改めて確認するとともに、子どもの特に大切な権利を明記しています。これらの権利は、最大限守られなければなりません。
一人ひとりが権利の主体であるということは、自分に権利があると同様に他の人にも権利があるということです。自分が権利の主体であることを自覚し、その上に立って他の人の権利を認識し、おたがいの権利を尊重する責務があることを理解することが大切です。一人ひとりの権利が大切にされる社会は、多くの人々のこうした自覚と認識と理解の中でつくられているのです。
私たちは、可能性に満ちたすべての子どもの幸せのために、子どもの自主性を尊重し、その権利を保障することを目的として、ここに岐阜市子どもの権利に関する条例を制定します。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、児童の権利に関する条約に基づき、すべての子どもの幸せのために、子どもの自主性を尊重し、その権利を保障することを目的とします。
(定義)
第2条 この条例において「子ども」とは、18歳未満の人その他これらの人と等しく権利を持つことがふさわしいと認められる人をいいます。
2 この条例において「子どもが育ち・学ぶ施設」とは、児童福祉法 (昭和22年法律第164号)に規定する児童福祉施設、学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する学校その他子どもが育ち、学ぶために入り、通い、利用する施設をいいます。
第2章 一人の人間として持っている子どもの権利
(子どもの権利の保障)
第3条 この章に規定する権利は、子どもが一人の人間として持っている特に大切な権利として保障されなければなりません。
(安全に安心して生きる権利)
第4条 子どもは、家庭や社会の中で個人として尊重され、安全に安心して生きるために、主として次にかかげる権利が保障されます。
(1) 命が大切にされること。
(2) 愛情を持って育まれること。
(3) 健康に配慮され、適切な医療の提供が受けられること。
(4) あらゆる差別を受けないこと。
(5) 虐待、暴力、いじめなどを受けないこと。
(6) 性的に不当なあつかいを受けないこと。
(のびのびと育つ権利)
第5条 子どもは、社会の中で一人の人間としてより良く育つために、主として次にかかげる権利が保障されます。
(1) 個性が認められ、人格が尊重されること。
(2) 自分に関することを主体的に決めること。
(3) 遊んだり、文化、芸術、スポーツに親しんだりすること。
(4) 学ぶこと。
(5) 安心して心や体を休ませること。
(6) 放任されず、適切な生活習慣や基礎的な社会性を身につけること。
(自分を守り、自分が守られる権利)
第6条 子どもは、自分を守り、自分が守られる権利があります。そのために、主として次にかかげる権利が保障されます。
(1) 権利を侵害される状況からのがれること。
(2) 成長をさまたげる状況から保護されること。
(3) 個人の秘密が守られること。
(4) 人格を傷つけられないこと。
(意見を述べ、参加する権利)
第7条 子どもは、自分に影響をおよぼすすべての事がらについて意見を述べる権利があり、仲間と集い、参加する権利があります。そのために、主として次にかかげる権利が保障されます。
(1) 必要な情報を取得すること。
(2) 自己表現や意見の表明ができ、それらが尊重されること。
(3) 仲間をつくり、仲間と集うこと。
(4) 年齢や成長に応じて社会に参画し、意見が反映されること。
(適切な支援を受ける権利)
第8条 子どもは、国籍のちがい、障害のあるなしその他置かれた状況に応じ、必要に応じて適切な支援を受けることができます。
第3章 子どもの権利を保障する責務
(市の責務と役割)
第9条 市は、市民と協働して必要な施策を策定し、実施し、子どもの権利の保障に努めなければなりません。
2 市は、前項の責務を果たすため、次にかかげる役割をになうものとします。
(1) さまざまな方法を通して、子どもの権利の普及と啓発に努めること。
(2) 子どもがなやみや困りごとを相談することができ、保護者が子どもを育てることに関して相談し、支援を受けることができる環境の整備に努めること。
(3) 市民全体で子どもを見守り、子どもの権利を保障する環境の整備に努めること。
(4) 市の組織を充実させるとともに、他の関係機関と連携し、子どもを権利の侵害から救済するため、必要な施策を実施すること。
(5) 子どもが、市の取組について情報を取得し、意見を述べ、参加することができるよう努めること。
(保護者の責務と役割)
第10条 保護者は、自分が、養育する子どもの権利を保障するための第一義的な責任を負うことを認識し、その権利の保障に努めなければなりません。
2 保護者は、前項の責務を果たすために、次にかかげる役割をになうものとします。
(1) 子どもに愛情を持って接し、子どもの安全と健康のために最大限の配慮をすること。
(2) 子どもの個性と人格を尊重し、教育を受け、文化、芸術、スポーツに接する機会を作るよう努めること。
(3) 家庭が、子どもにとって楽しく安心していられる場所となるよう配慮するとともに、適切な生活習慣と基礎的な社会性が身につくよう努めること。
(4) 子どもを虐待しないこと。
(5) 子どもの大切な秘密を不当に侵害しないように努めること。
(6) 子どもの意見を尊重するよう努めること。
(地域住民の責務と役割)
第11条 地域住民は、身近にいる子どもに関心を持って見守り、働きかけ、子どもの権利の保障に努めなければなりません。
2 地域住民は、前項の責務を果たすために、次にかかげる役割をになうものとします。
(1) 子どもの権利を守り、子どもが一人の人間として健やかに成長していくことができるよう、安全で安心なコミュニティづくりに努めること。
(2) 子どもを見守り、必要に応じて関係機関へ連絡や相談をするなどの支援に努めること。
(3) 子どもが、地域の活動について情報を取得し、意見を述べ、主体的に参画することができるよう努めること。
(子どもが育ち・学ぶ施設の関係者の責務と役割)
第12条 子どもが育ち・学ぶ施設の関係者は、子どもが主体的に育ち・学ぶことができる環境をつくり、子どもの権利の保障に努めなければなりません。
2 子どもが育ち・学ぶ施設の関係者は、前項の責務を果たすために、次にかかげる役割をになうものとします。
(1) 子どもを権利の主体としてとらえ、子どもの立場に立った施設の運営を図るよう努めること。
(2) 虐待、体罰、いじめなどについての相談、救済、防止のために措置を講じるとともに、関係者や関係機関との連携に努めること。
(3) 施設の運営について子どもに適切な情報を提供し、子どもの意見を聴くよう努めること。
(4) 子どもの個性を尊重し、一人ひとりに応じた保育や教育などを行うとともに、子どもが必要とする情報を提供するよう努めること。
(事業者の責務と役割)
第13条 事業者は、その事業活動において子どもの権利を尊重するとともに、その事業所で働く従業者が、子どもの権利を尊重できるよう支援を行い、子どもの権利の保障に努めなければなりません。
2 事業者は、前項の責務を果たすために、次にかかげる役割をになうものとします。
(1) 事業活動が子どもに深く影響をおよぼす場合があることを認識し、子どもの権利に配慮した事業活動を行うよう努めること。
(2) 事業所で働く従業者に対し、子どもの権利が保障されるための必要な措置を講じるとともに、子どもの権利についての理解をうながすよう努めること。
(共通の役割)
第14条 市、保護者、地域住民、子どもが育ち・学ぶ施設の関係者、事業者は、子どもの権利を守るため、相互に連携し、協力するよう努めなければなりません。
2 市、保護者、地域住民、子どもが育ち・学ぶ施設の関係者、事業者は、各々の役割を通して、子どもが自分の権利について自覚するよううながすとともに、子どもが他の人の権利を尊重することの大切さを理解することができるよう努めなければなりません。
第4章 権利の自覚と他の人の権利を尊重する責務
(子どもの責務と役割)
第15条 子どもは、自分の権利について自覚し、他の人の権利を認め、尊重するよう努めなければなりません。
2 子どもは、前項の責務を果たすために、次にかかげる役割をになうものとします。
(1) 自分の権利について学び、正しく行使することを通して自分の権利を実現するよう努めること。
(2) いじめや差別など他の人の権利を侵害する行為を行わず、また、これらの行為がなくなるよう努めること。
(3) 地域活動やボランティア活動などに主体的に参画するよう努めること。
第5章 子どもの権利推進委員会
第16条 市と市民がそれぞれの責務と役割を果たすとともに、子どもの権利が総合的に保障されるよう、岐阜市子どもの権利推進委員会(以下「推進委員会」といいます。)を設置します。
2 推進委員会は、次にかかげる事項について審議し、必要に応じて市に報告を求めます。
(1) 子どもの権利を保障する市の施策の実施に関すること。
(2) 子どもの権利の保障の状況に関すること。
3 推進委員会は、前項各号に定める事項について、必要があると認めた場合は、市に対して提言することができます。
4 推進委員会は、委員15人以内で組織します。
5 委員は、次にかかげる者のうちから、市長が委嘱、任命をします。
(1) 人権擁護、教育、児童福祉、保健医療の関係者
(2) 学識経験を有する者
(3) 公募に応じた市民
(4) 前3号にかかげる者のほか、市長が適当と認める者
6 委員の任期は、2年とします。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とします。
7 委員は、再任されることができます。
8 前各項に定めるもののほか、推進委員会の組織、運営に関し必要な事項は、規則で定めます。
第6章 雑則
(委任)
第17条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が定めます。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成18年4月1日から施行する。
(非常勤の特別職職員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部改正)
2 非常勤の特別職職員の報酬及び費用弁償に関する条例(昭和59年岐阜市条例第11号)の一部を次のように改正する。
次の表の改正後の欄の表中太線で囲まれた部分を加える。